慢性的な痛み・神経痛への鍼灸ケア

【1. 長引く痛みにお悩みの方へ】

慢性的な痛みには、筋肉や関節の状態だけでなく、脳・神経の働きや睡眠、ストレスなども関係することが分かっています。

鍼灸院はりの響きでは、痛む場所だけでなく、脳・神経と身体のつながりにも着目しながら、一人ひとりに合わせたケアを考えます。

次のようなお悩みがある方は、現在の状態を一度整理してみることも大切です。

① 痛みが長く続く・繰り返す

腰、首、肩、背中、関節などの痛みが続く/良くなったり悪くなったりを繰り返す

② 痛み以外のつらさもある

眠りが浅い、疲れが取れない、身体に力が入る、気分が落ち込む、活動量が減っている

③ 今後のケアについて相談したい

医療機関で治療を受けているが痛みが残る/薬以外の方法も検討したい/自分の状態に鍼灸が合うか知りたい

鍼灸は、すべての慢性痛に効果が確立した治療ではありません。期待できることと限界を説明したうえで、鍼灸でできるケアを一緒に考えます。

【2. 長引く痛みには、どのような仕組みが関わるのでしょうか?】

痛みは、単に痛む場所だけで決まるものではありません。痛みの仕組みは大きく3つに分けて説明されますが、実際には複数の仕組みが重なっていることもあります。

① 組織の損傷や炎症に伴う痛み(侵害受容性疼痛)

筋肉、関節、皮膚などの組織に損傷や炎症が起こり、その情報が神経を通じて伝わることで生じる痛みです。腰痛や関節痛などにも、この仕組みが関わることがあります。

② 神経の病変や障害に伴う痛み(神経障害性疼痛)

痛みや感覚を伝える体性感覚神経系に病変や疾患があることで生じる痛みです。焼けるような痛み、電気が走るような痛み、しびれなどを伴うことがあります。帯状疱疹後神経痛や一部の神経根障害などが例です。

③ 痛みを感じる仕組みの変化が関わる痛み(痛覚変調性疼痛)

組織の損傷や体性感覚神経系の明らかな病変だけでは説明できない、侵害受容の変化が関わる痛みです。痛みへの感受性が高まったり、広い範囲に痛みを感じたりすることがあります。線維筋痛症などで、この仕組みが関わることが知られています。

(国際疼痛学会:痛みに関する用語)

【3. 「慢性的な痛みに対する鍼灸の研究と、医学的な位置づけ」

鍼灸はすべての慢性痛に効果が確立しているわけではありませんが、慢性的な痛みに対するケアの選択肢の一つとして、ガイドラインでも取り上げられています。


2021年の『慢性疼痛診療ガイドライン』では、「鍼灸治療は慢性疼痛に有用か」という問いに対して、

推奨度:2(弱) 施行することを弱く推奨する(提案する)
エビデンス総体:C(低い) 効果の推定値に対する確信は限定的

ガイドラインで検討された研究には、慢性頸部痛、慢性片頭痛、線維筋痛症、慢性前立腺炎・慢性骨盤痛症候群を対象とした4件のランダム化比較試験が含まれています。

ガイドラインの回答では、効果や費用、患者さんの価値観を踏まえ、慢性疼痛に関する適切な知識を持つ鍼灸師が行うことが重要とされています。

参考資料:慢性疼痛診療ガイドライン2021(CQ H-1:鍼灸治療は慢性疼痛に有用か?/p.142–143)

【4. 鍼灸と、脳がもつ痛みの調節機構】

痛みは、身体から脳へ伝わる信号だけで決まるものではありません。脳や脊髄には、痛みの信号を抑えたり、強めたりする「痛みの調節機構」が備わっています。

鍼刺激は、皮膚や筋肉の感覚神経を介して脊髄や脳に伝わります。研究では、脳から脊髄へ痛みの信号を調節する経路(下行性疼痛調節系)などと、鍼刺激との関係が調べられています。

近年はMRIを用いた研究でも、鍼刺激に伴う脳の活動や神経ネットワークの変化が検討されています。

鍼灸と痛みの調節に関する研究

慢性痛に対する鍼灸と脳機能の研究レビュー(2026年)
fMRIを用いた64件の研究をまとめ、痛みに関係する脳の活動や神経ネットワークを検討しています。

鍼灸による鎮痛の神経・分子メカニズムに関する総説(2020年)
脳や脊髄の痛みの調節機構、神経伝達物質など、鍼刺激の作用に関する研究を整理しています。

慢性痛に対する鍼灸の臨床研究をまとめたメタ解析(2018年)
39件の臨床試験、約2万人のデータを統合し、慢性筋骨格痛や慢性頭痛などに対する鍼灸を検討しています。

※研究で示された脳や神経の変化と、個々の方に対する臨床効果は区別して考える必要があります。

【5. 痛みとの向き合い方も、一緒に考えます】

慢性的な痛みは、睡眠や気分、仕事や家事、外出など、日常生活にも影響することがあります。当院では、痛みの経過だけでなく、痛みによって何に困っているのか、不安に感じていることは何かも伺います。

施術中の対話も大切にしています。 ストレスや不安、睡眠、生活環境などが痛みの感じ方に関わることもあります。心理的な要因が関係していても、痛みが気のせいという意味ではありません。

「少しでも眠りやすくなりたい」「外出への不安を減らしたい」「仕事や家事を続けたい」など、ご本人が大切にしたい目標を伺いながら、身体の状態やご希望に合わせて施術の進め方を一緒に考えます。

【6. よくあるご質問】

Q. 長く続いている痛みに、鍼灸は効果がありますか?

A. 痛みの種類や状態によって異なり、すべての慢性痛に効果があるとはいえません。慢性疼痛診療ガイドラインでは弱い推奨・エビデンスCとされています。期待できることと限界を説明し、状態に応じて検討します。

Q. ストレスが関係している痛みは、気のせいなのでしょうか?

A. いいえ。痛みは本人が実際に感じているつらい体験です。ストレスや不安、睡眠などが痛みの感じ方に影響することはありますが、それは痛みが想像上のものという意味ではありません。身体面と生活背景の両方に目を向けます。

Q. 何回くらい通えばよいですか?

A. まずは週に1回位の頻度で前向きな変化が出るか評価していただく事が多いです。とりあえず一度試してみたいも大丈夫です。

Q. すぐに医療機関を受診した方がよい痛みはありますか?

A. 突然の強い痛み、発熱や強い腫れを伴う痛み、急に進むしびれや筋力低下、排尿・排便の異常を伴う腰痛、外傷後の強い痛みなどは、鍼灸の前に速やかに医療機関へご相談ください。

鍼灸と漢方相談について

わたなべ

漢方相談では、体調や生活背景、現在の服薬状況などを丁寧に伺い、必要な情報を確認します。

そのうえで、鍼灸と漢方相談それぞれでできることや注意点をご説明します。

慢性的な痛みのほかに、睡眠や胃腸の不調、冷えなど、複数のお悩みを抱えている方から漢方相談についてご質問をいただくこともあります。

当院では、体調や生活背景、現在の服薬・治療状況、ご希望を伺いながら、鍼灸と漢方相談それぞれでできることをご案内します。

慢性的な痛みに関するコラムもお読みください。

痛みについて気になることや、鍼灸がご自身に合うかどうかなど、まずはお気軽にご相談ください。30分の無料相談も承っています。

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