繰り返す便秘や下痢…それ、〇〇かもしれません。
こんにちは。はりの響き 渡辺です。
お腹が張るような感じがある、数ヶ月下痢や便秘を繰り返す、けど医療機関にかかっても「胃腸に異常はありません」と言われてしまった…。
そんなご経験ありませんか?
もしかしたらそれは「過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)」かもしれません。
お腹の動きは、自律神経で調節されています
自律神経とは、身体を活動的にする交感神経と、身体を休息させる副交感神経の2つの神経のことです。
外部環境の変化やストレス、ホルモンの乱れなどから身を守って身体を一定の状態に保とうとするのが自律神経の役割ですが、過度なストレスなどで自律神経のバランスが崩れてしまうと、さまざまな症状が出ることがあります。
自律神経のバランスは、お腹の動きに直接影響します。
例えば、腸が痙攣すれば便がコロコロになってお腹のはり・腹痛の原因になります。腸の動きが過剰に高まれば、水分を含んだ便が急激に下りていき、下痢になります。
自動調節機能の不安定さが、過敏性腸症候群にも影響していると考えられています。
病院などで検査しても胃腸に炎症や潰瘍などの異常な所見がないにも関わらず、お腹のはりや不快感、下痢・便秘など便通異常を生じることを「過敏性腸症候群(IBS)」と言います。
直近3ヶ月以内で月に3日以上そのような症状がある方は、IBSの可能性があります。
IBSになる原因
では、なぜIBSになってしまうのでしょうか?日本消化器学会のガイドラインによると、以下の5つが考えられるそうです。
①心理的要因の影響
IBSはストレスの影響で、「大腸自体の運動亢進」「脳が刺激を強く拾いやすくなる」等が確認されています。
②粘膜炎症の関与
IBSの大腸は、免疫が亢進し軽度な炎症状態と考えられています。
③腸内細菌の異常
IBSは腸内細菌バランスが健常者とは異なり、下痢型、便秘型、混合型でも異なると報告されています。
④神経伝達物質の関与
IBSはセロトニンの前駆物質であるトリプトファンを欠乏により、内臓知覚、不安感が高まる。
⑤重症度と他の心理的異常の関係
IBSが重症化するほど、うつや不安、などの他の身体症状が増える傾向が報告されています。
鍼灸・漢方薬でできるアプローチ
IBSの方は、普段から緊張傾向がつよく、うまくリラックスできない方が多いです。
そこで鍼灸は、お腹と脳をつなぐ自律神経バランス改善を目的におこないます。神経の緊張癖を和らげ、ストレス耐性を高める効果が期待できます。
鍼治療や漢方薬は、自律神経に働きかけ、本来のお腹の調節機能を高める効果が期待できます。
WHO(世界保健機関)においても、鍼は胃腸の機能障害を含む多くの適応症が認められています。BSにおいて、鍼灸の有効性を示す論文報告も増えてきました。
《 IBS 鍼灸の有効性 論文》
IBSは特定の条件下で症状が悪化します。言い換えると、特定条件で脳が緊張しやすくなると考えられています。
「どのような状況で?」「どんな言葉がうかび?」「どんな気分になるのか?」考え方の癖を知り、修正していくことでストレス耐性が高まります。
漢方薬は副作用のリスクが少なく、IBSに対して有効な治療法になります。ストレス緩和効果の期待できる半夏、陳皮、消化管の動きを正常化する芍薬などの生薬が配合されています。
【日本消化器学会ガイドライン】においても、IBSに漢方薬は【推奨する】に分類されています。
腸内環境へのアプローチ
IBSの方は、腸内細菌バランスが健常者と異なることが報告されています。腸内細菌のバランスは消化管の動きだけでなく、粘膜のバリア機能など多くの機能に影響します。
BSの方は小腸内での細菌が異常に多くなっている小腸内異常細菌増殖(SIBO)の罹患率がおおよそ64%であるとの報告があります。
これらは小腸の蠕動運動不全や、胃酸の分泌不全も指摘されており、胃酸を抑える薬を飲まれている方は注意が必要です。
当院では、腸内環境改善のための情報提供も積極的に行っています。
食事の影響
症状を悪化させやすい食物があります。自分に合わない食べものを把握することも症状コントロールに大切です。
例えば、アルコール、脂っこいもの、カフェイン、乳製品、人工甘味量、香辛料などは人によって症状を悪化させやすいと言われています。
FODMAPという言葉をご存知でしょうか。最近注目度が上がり、知っているという方も多いと思います。
FODMAPとは、「発酵性のオリゴ糖」「二糖類」「単糖類」「ポリオール類」などの糖質で、小腸で消化吸収されず水分をため込み、早い速度で発酵することでガスを発生し、IBSの悪化要因として注目されています。
食べた後にお腹のはりの強いタイプは、3週間ほど、高FODMAP食を控えてみて、お腹の調子を評価するのもおすすめです。
【FODMAPを多く含む高FODMAP食】
- 小麦や小麦で作られた麺類(パスタ、うどん、ラーメンなど)
- 納豆、豆腐
- 牛乳、ヨーグルト
- ネギ、玉ねぎ、ゴボウなどの野菜
- りんご、柿、スイカなどの果物
【FODMAPをあまり含まない低FODMAP食】
- コメ、蕎麦
- 魚介類、赤身の牛肉、鶏肉、卵
- トマト、ほうれん草、もやし、にんじん、かぼちゃなどの野菜
- バナナ、キウイなどの果物
こうした食事面での注意も続けてみてください。
ただ、一度自律神経のバランスが乱れてしまうと、自力で元通りにするのは大変です。
当院では、IBSにおいて心理面でのサポート、信頼できる情報提供を大切にしています。まずはご相談下さい。