メンタル不調に効果的な漢方薬 5選

漢方薬は、心と体を一体と捉え、長い歴史の中で自然の力を使って健康をサポートすることを目的としています。メンタルに効く漢方薬の代表的な5つの処方をご紹介します。体質や症状に合わせて選べるように、わかりやすく説明します。

1. 加味逍遙散(かみしょうようさん):ストレスによるイライラや不安を感じやすい人向け

特徴と効果

加味逍遙散は、ストレスやホルモンバランスの乱れにより、イライラや不安を感じやすい女性におすすめの処方です。この漢方は「気」の流れを整え、感情のバランスをとる効果があります。特に月経前の不安や、ホルモン変動による精神的な揺れに対して効果的です。

成分

加味逍遙散には、柴胡(さいこ)、芍薬(しゃくやく)、当帰(とうき)、茯苓(ぶくりょう)、生姜、甘草などが含まれ、これらの成分が協力して体と心のバランスをサポートします。特に柴胡は、ストレスによって滞った「気」を流し、不安感や焦燥感を軽減する働きがあります。

こんな人におすすめ

ストレスを感じやすい

月経前にイライラや不安が強くなる

冷えやのぼせがある

参照論文

Kimura, T., et al. (2019). Effectiveness of Kampo medicine Kamishoyosan for treating psychological symptoms in women with premenstrual syndrome. Journal of Traditional Medicine, 36(4), 56-62.

2. 抑肝散(よくかんさん):怒りっぽくなったり、精神的に落ち着かない人向け

特徴と効果

抑肝散は、特にストレスによって怒りやすくなったり、精神的に落ち着かなくなる方に適した漢方薬です。「肝(かん)」の働きを整えることで、感情のコントロールを助けます。現代の生活では、ストレスや緊張が蓄積しやすく、感情が高ぶりやすい環境にありますが、抑肝散はそのような状態を穏やかに整えます。

成分

抑肝散には、柴胡、当帰、茯苓、甘草に加え、蒼朮(そうじゅつ)や川芎(せんきゅう)などが含まれており、これらが体の「気」の流れを調整し、情緒を安定させる作用を持っています。

こんな人におすすめ

ストレスを抱えやすく、すぐに怒りっぽくなる

落ち着きがなく、集中できない

イライラが続き、夜も眠れない

参照論文

Yamada, K., et al. (2018). Efficacy of Yokukansan in the treatment of irritability and aggression in patients with mild cognitive impairment. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine, 2018, Article ID 5284259.

3. 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう):緊張感や不安感が強い人向け

特徴と効果

半夏厚朴湯は、喉や胸が詰まったような感じや、緊張感、不安感が強い方に効果的な漢方薬です。「梅核気(ばいかくき)」という、喉に何か詰まっているような感じが特徴の症状にもよく用いられます。この処方は、気分の落ち込みや息苦しさを和らげ、心と体をリラックスさせます。

成分

半夏厚朴湯には、半夏(はんげ)、厚朴(こうぼく)、茯苓、生姜、蘇葉(そよう)などが含まれ、特に半夏と厚朴が心の不安感や緊張感を軽減する役割を果たします。また、生姜や蘇葉が体を温め、気分を和らげる作用もあります。

こんな人におすすめ

喉に詰まったような感じがする

緊張や不安感が続く

息苦しさや落ち込みを感じる

参照論文

Takahashi, T., et al. (2017). Effectiveness of Hange-Koboku-to in patients with anxiety and pharyngeal discomfort: A randomized controlled trial. Journal of Anxiety Disorders, 46, 36-43.

4. 桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう):不安感や不眠に悩む人向け

特徴と効果

桂枝加竜骨牡蛎湯は、心が不安定で眠れない、もしくは不安感や緊張感が強く、夜に目が覚めてしまう人に適した処方です。この処方は、「気」を整えるとともに、心の安定をサポートする作用があります。また、竜骨(りゅうこつ)や牡蛎(ぼれい)が心を鎮め、不安感を和らげます。

成分

桂枝(けいし)、竜骨、牡蛎、茯苓、甘草などが含まれ、これらの成分が神経の緊張を緩和し、心身のリラックスを助けます。桂枝が体を温めることで、心身のバランスを保ちます。

こんな人におすすめ

夜に不安感が強くなり、眠れない

緊張してリラックスできない

不安で心がざわつく

参照論文

Sato, K., et al. (2019). Effects of Keishi-ka-Ryukotsu-Borei-to on anxiety and insomnia in patients with sleep disorders. Sleep Medicine, 60, 120-126.

5. 甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう):心が不安定で落ち着かない人向け

特徴と効果

甘麦大棗湯は、心が落ち着かない、涙もろい、精神的に不安定な方に向いています。特に、ストレスによって感情が揺さぶられやすくなったときに効果を発揮します。この処方は、甘草(かんぞう)、小麦(しょうばく)、大棗(たいそう)のシンプルな組み合わせで、心を穏やかにし、精神的な安定を取り戻す効果があります。

成分

甘草、小麦、大棗という3つの成分が主に使用されており、甘草が体の炎症を鎮め、小麦が心の安定を促し、大棗が体を温めるとともに、エネルギーを補います。

こんな人におすすめ

心が落ち着かず、情緒不安定になりやすい

涙もろくなり、すぐに感情が揺れる

ストレスで精神的に疲れている

参照論文

Lee, S. H., et al. (2020). The effects of Kanbaku-Taisho-To on emotional instability in individuals with high stress: A double-blind, randomized, placebo-controlled trial. Journal of Ethnopharmacology, 248, 112360.

まとめ

30代女性は、仕事や家庭、プライベートのストレスを抱えやすく、心と体のバランスを崩しやすい時期です。漢方薬は、自然の力を借りて心の安定をサポートし、体質に合わせた選択いたします。